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サントラから紐解く映画話。「グレイテスト・ショーマン」あとづけ後編

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前回の記事の後「いや、そこを書けよ」と飲み屋で友人から言われたりしたのでグレイテスト・ショーマンの楽曲は「ここが良かった!」という部分をご紹介できればと。

あ、今回もネタバレ含みますんで!
ーーーーーー以下ネタバレ注意ーーーーーーーー
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

The Greatest Show


ほぼ表題曲のThe Greatest Show。予告と映画泥棒が終わった後、スッと始まる20世紀フォックスロゴ。そこから突然始まる大音量。1音目で「あ、これ傑作来ちゃった」と圧倒されるのは前回の記事の通り。

この楽曲のすごい部分として最初に褒めたいのはダイナミクスレンジの広さ。最初の「アーアーアアアー」にこの曲のピーク音圧が来ているのだが、その直後のボーカル「Ladies and gents, this is the moment you’ve waited for
(訳:皆様お待ちかねの時間です)」部分、ここの音量が極端に小さくなっている。大きな音の直後に小さな声で喋るというのは、これ自体が演説の極意であり、言ってしまえば詐欺師のやり口なのだ。
この大きな音の後に沈黙(ないしは小さな音)を挟むことで注意を引き寄せる技術は「アーアーアアアー(ドンッ)」の後の広い余韻でも使われている。この曲のド頭の部分で主人公バーナムの「エンターテイナーとして目が離せない」感と悪魔的な魅力の持ち主であることが一発でわかる構成になっているのだ。す、すごい!


さらに歌入りあと3回目の「アーアーアアアー」にはテンションコードがついてくるのだが、これが解決しない。解決しないままBメロに突入していくので、解決しないまま緊張感を保ち続けることになる。う、うまい!
そこから弾けるように華やかな混声を引き連れてサビへと突入。絵的にもここから爆発的に情報量が増え、圧倒的華やかさに観客の心が踊るわけですよ!

さて、劇中だとサビの途中から劇は霧散していき少年時代のバーナム少年へとカメラが移動。そして映画のラストでは、紆余曲折あったバーナムがこの曲へと帰ってくる。
つまりかつて少年時代に描いた夢のショーを実現する形で円環が閉じる構造になっている。この時点で筆者は劇場で立ち上がりそうになっていた。


そしてこの楽曲、バーナムが一座に戻って来てからの後半にもちゃんと仕掛けがあるのだ。
前回の記事からの繰り返しになるが、主役がフィリップに交代し、「先導するバーナム、続くオディティーズ」から「オディティーズの中に在るフィリップ」へと歌割りが変化。これだけでフィリップがアン・ウィーラーとの愛だけでなく、真に彼らの一員となったことを鮮やかに示すのだ。

この楽曲は、そもそものオーダーが「カニエ・ウエストやスティーブ・ジョブズのような並外れた人物が舞台に登場する瞬間を待っている時のように感じさせる曲」だったそうだ。な、なるほど!
ほかにも、イントロは監督がそれとなく弾いた手癖にインスパイアされただのと、話題に事欠かないすげぇ曲だよ!

Never Enough


時代背景から考えたらオペラとかそういうものになるところですが、監督からのオーダーは「セリーヌ・ディオンなどのディーヴァの曲」。つまりは、最大公約数でこの曲を聴いた人間が「本物だ!」と思えるような曲ということだろう。

しかしこれを正面から作る度胸にはチビる。RHYMESTER宇多丸氏の映画評からの引用だが「劇中内作品に過剰な意味をもたせるのは危険」という考え方には首がもげるほどに同意。
劇中内の作品を見て感動している、圧倒されているなどの描写を描いてしまうと、劇中で起きていることと観客が感じることがイコールでないといけなくなるので、万が一、曲がイマイチだったら、曲が観客の好みやイメージと乖離していたら……など想像するだけで恐ろしい……

この曲、劇中では「聞いたこともないが評判のいい歌姫に歌わせる」という割と常軌を逸した依頼の仕方でショーの当日を迎え、我々観客も「え、本当に大丈夫なんか……?」と不安な状態で聞き始めると、

1.広い音域で
2.広いダイナミクスレンジのボーカルが
3.フルオーケストラをバックに歌う
4.良い曲

という、 「ホームランを打ってください」的な正気を疑うオーダーに本当に応えてしまったストロングスタイルの圧倒的なパフォーマンスを見せつけられる。なんてこった!
誰が聞いても「あ、本物だ」とわかってしまう感動の押し売り。「セリーヌ・ディオンやアデルのような現在のスーパースターたちから影響を受けた」という辺りなるほどの圧力。身動きが取れない映画館という視聴環境もプラスに働くので是非劇場で堪能して欲しい。

This Is Me


全米でめちゃんこ大ヒットの名曲。劇中では仲間だと思っていたバーナムに閉め出され、上流階級の奇異の目の中、そして街中からのブーイングの中を毅然と進んでいく行進曲。


会場から外へ出て心無いそしりから吹雪の中を行進していく様は力強く、筆者の仲間のパンクスが「グッと来たよ」と言うのも納得。この辺りはジャンル作品を作っている方などは共感度が高いのでは。


舞台は万座の劇場へと移り、各々が胸を張って自身に満ちた振る舞いを見せる様はまさしく「これが私だ」と宣言する姿であり、そしてこの劇場こそが自分たちの家であると主張しているかのよう。作曲家の「ケイティ・ペリーやケリー・クラークソン、ピンクといったパワーと権威ある女性たちが歌っていそうなものだ」との言葉から「Never Enough」と対極にある、等身大の楽曲として設計されたのではなかろうか。


ちなみにWEBでも話題になっているワークショップセッションの動画はリハで音楽が出来上がっていく瞬間を凝縮したような、音楽が受肉する瞬間が収められているので必見。

他にも魅力的な楽曲が満載なのでぜひ買おう! 『ザ・グレイテスト・ショーマン』サウンドトラック!

Writer
宮下つむじ

世界を旅するボンクラ・ライター
飲み屋で聞いた面白い話程度の精度で情報を発信します

 

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